FXで使う移動平均線の期間設定へのこだわりは捨てたほうが良い

FXを始めたての初心者や、FXを始めてからテクニカル分析の本をかじった結果、テクニカル分析の期間設定などにこだわるようになる人など。こういった人は必ずいると思う。ちなみに僕自身もFXの世界に踏み入れてから1~2年目は延々とテクニカル分析推奨派でしたから。

さて、テクニカル分析で最も利用されているのが移動平均線(MA)であり、4~5人に1人が移動平均線をトレードに使っているという話もあるくらいです。FXブログを巡ると必ず見当たるのが「移動平均線の期間って何日がいいの?」という話題だ。

しかし現実に勝っているトレーダーは「移動平均線の期間なんて割とどうでもいい。」と言っていたり、「移動平均線の期間を話題にしているうちは三流以下。」と言い切っているトレーダーもいる。ということで、移動平均線の期間について解説してみたい。

よく使われている移動平均線の期間

5日、10日、13日、15日、20日、21日、25日、26日、45日、50日、75日、100日、200日が概ねよく使われている傾向にあるそうです。なぜ、これらの数値が期間として多用されているのか。無理やり意味付けを行ってみると・・。

  1. 5日 = 1週間
  2. 10日 = 2週間
  3. 13日 = 1ヶ月の半分?
  4. 15日 = 3週間
  5. 20日 = 1ヶ月
  6. 100日 = 約半年?
  7. 200日 = 約1年?

おそらくこんな感じになるのだろう。相場が動くのは平日のみ、つまり1週間で5日間ですね。1週間という長さでポジションを保有するトレーダーの、保有ポジションの平均価格を求めようと思うなら、5日移動平均線を使うのが良いということになる。

→ FXにおける移動平均線を使った手法が意味するものを考える

もしかすると移動平均線の期間を本気で探しているような人は、移動平均線の中身(意味)について考えたことは無いかもしれないが、どんなテクニカル分析も意味を知っておいたほうが後々役に立ちますよ。なぜ、期間にこだわるのか、この点も一度考え直した方が良い。

移動平均線の期間にこだわると、どんなメリットがあるのか?

どうして多くの人がFXブログなどに駆け込んで、移動平均線の期間を探したり、ある程度知識を持っている人なら検証ソフトなどで移動平均線の期間探しにハマってしまったりするのだろうか。移動平均線の期間にそこまでこだわる理由は?

単純に言えば、移動平均線とは設定した期間で想定しているトレーダーたちの平均保有ポジションの価格を、ある程度推定して、その価格帯を売買の役に立てようとしているからです。例えば、以下の様な使い方が代表的です。

  1. 価格が移動平均線を抜けたら、その方向にエントリーする
  2. 移動平均線がクロスしたら、エントリーする
  3. 移動平均線に価格が落ちてきたところを拾う

1番目の使い方は、原理的には設定した期間で想定しているトレーダーたちが移動平均線を超えたから、その方向に売買を行うと読んで自分も付いて行く方法だ。

2番目の使い方は、1本の移動平均線では想定外のトレーダーの行動によって、自分が想定しているトレーダーの売買行動が相殺されてしまう可能性があるから、騙しをフィルターしようと2本に増やして工夫した例。もちろん、3本使う方法もある。

3番目の使い方は、トレンドの転換を狙わずに既に発生しているトレンドで優位な立場にいるトレーダーたちの売買に途中から乗ろうと言う考え方。既に利益が出ているなら、更なる利益のために途中で買い増しする可能性が高いという想定がある。

そして、どの方法を使うにしても移動平均線に使う期間でパフォーマンスが大きく違ってくるんですね。ここが悩ましいところで、5日移動平均線だと価格と何度もあたってしまって、どれを根拠にエントリーすれば迷ってしまう。だから、20日移動平均線にしてみたけど、今度はサインが遅すぎて自分が入る頃にはトレンドが終わってしまっているなど。

こういった問題があるから、多くの人が最適な期間設定があると信じて、色々とググったりするのです。しかし、残念ながら移動平均線の期間に正解は存在しない。どんな期間を使うにしろ、それが上手くいくかどうかは99%相場次第です。

 

移動平均線が上手くいくかどうかは相場次第である理由

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さっそく実証実験を行っていきます。面倒くさい作業だと思わずに、実際に自分のお金を投じて痛い目を見る前に少しくらいは検証したほうが良いと思いますよ。

これはExcelである計算を行って算出した架空の相場です。実際に存在しない相場であるにも関わらず、表示させた単なる移動平均線は上手く相場を捉えており、移動平均線のサイン通りに売買していれば、トレンドの最初から乗れているのでかなりの利益が期待できますね。

しかし、これだけを見て、この移動平均線に設定した期間が素晴らしいものであると判断にするには速いです。

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相場の状況が変化して、このように上下に激しく揺れ動くようになったらどうでしょう。辛うじて移動平均はトレンドを捉えられているように見えますが、さっきの相場と比べるとトレンドの先端から入るのが厳しくなっているのが分かります。

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更に相場の状況が変わって、こんな相場になったらどうでしょうか。最初はトレンドの先端を的確に捉えていた優秀な移動平均線の「期間」も、相場が変化してしまえば役に立たなくなってしまいます

このように、何度も価格が移動平均線を行ったり来たりするため、サイン通りに売買していると手数料やスプレッドによって利益が削られ、トータルの利益が非常に少ないものになるか、マイナスに追い込まれていしまう危険をはらんでいる。

ですが、こんな相場になってしまっても解決法があります。それが移動平均線の期間ですよね? さっそく期間を設定しなおしてみました。

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最初の移動平均線では捉えられなかった動きを、こちらの移動平均線は上手く捉えられるようになっているのがよく分かります。果たして、このような期間の設定の仕方は正しい方法なのだろうか

移動平均線の期間の「罠」

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実は、今回使った架空の相場には意図的に周期性を含ませています。相場には確かに周期性が存在しますが、実際にはこんなに綺麗な周期を描くことはありません。

しかし、この周期性に対して移動平均線の期間をフィットさせれば、トレンドの先端を捉えやすくなり利益を出しやすくなるのは分かりました。ただ、現実の相場では、周期性は常に変化しているため、どのような期間を設定しようが無意味でしか無い

相場を支配する法則的な「周期」など存在しない。人間の脳は想像力があるので、ついつい周期性があると思い込んでしまうのですが、実際には無いと思ったほうが正しいアプローチをしやすいのが現実だ。では、周期性の無い相場を見てみよう。

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周期性があるように見えますが、これは完全にランダムな相場です。移動平均線は上手くトレンドを捉えているように見えるが、実際に売買してみると利益はほとんど残らないのが現実です。

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移動平均線の期間を変えれば、マシになりそうですが、あくまでも今の相場の周期性にフィットしてるだけであって、今後も周期性は変化し続けるため、未来においてトータルで利益を残すとは全く言えないんです。

移動平均線の期間に心酔することの危険性

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なんとなく移動平均線の期間設定の罠について気づいたとは思うが、実際にバックテストを行ってみて更にしみじみと理解していきます。、

例えば、180日移動平均線を使ったこの手法。ドル円のトレードにおいてトータルでプラスの成績を残しています。利益確定には、14日移動平均線が最適な結果を残している。では、この180日のエントリーと、14日の利確を採用した移動平均線の手法は今後も機能し続けるのか?

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残念ながら、翌年はまったくの正反対の結果となり、損失だけを残して終わってしまいました。180日・14日移動平均線の組み合わせは2010~2011年の相場には最適だったようだが、2011~2012年の相場には全くフィットしていなかったということだ。

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完全にイタチごっこです。期間を相場の周期性に合わせれば、このように利益が残る移動平均線の期間を求めることは可能です。しかし、残念ながらそこには意味が無い。どうせ周期性の変化には対応できずに途中で利益を吐き出すのがオチです。

移動平均線の期間の罠とは、期間を設定しようとすればするほど、ドツボにハマってしまって相場に対して正しいアプローチが出来なくなることです。移動平均線の期間探しは、ある意味で去年当選した番号が今年も当選すると思って宝くじを買う行為と似ています

普通の感覚の人なら、去年当選した番号が今年も当選するとは決して思わないでしょう。それが不思議な事に移動平均線の期間となると、この普通の感覚を忘れて、去年当選した番号探しにハマってしまうんですね・・。去年当選した宝くじの番号に優位性なんて欠片もありません。

「期間」以外で解決する方法を考えるのが良い

僕としてはテクニカル分析だけで相場から利益を挙げるのは、かなり困難な技だと思っていますが、ここはあえて移動平均線の期間以外を使って、どうにか解決できないかを考えてみます。

トレンドを抽出する

例えば、20日移動平均線を使っているとします。相場の状況によっては上手くトレンドを捉えられるのですが、相場が変化して値動きが上下に激しくなったりすると、移動平均線は上手くトレンドを捉えられなくなり、不要なサインを多発するようになってしまう。

このような環境下で無闇にトレードをしてしまうと往復ビンタを食らったりして、確実に損失を積み重ねてしまう。多くの移動平均線の期間や本数にこだわる人が、この相場の周期性の変化に悩まされている。そこで解決策の一つとして、周期性の速度が早過ぎる時を「レンジ」として、周期性がゆったりとして捉えやすい環境を「トレンド」という区分にします。

では、このような区分の方法で本当にレンジとトレンドを上手く抽出し、エントリーしなくても良い時にエントリーしないことで利益が残るのか、さっそく検証してみた。

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20日移動平均線のクロス手法です。直近7年間のトレードではほとんど利益を出せていません。理由は単純で、レンジ相場でも無闇にエントリーを重ねるから。

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しかし、そこにレンジ・トレンドをある程度抽出できる方法を組み入れると、トータルで利益が残るように改善されます。移動平均線の期間はもちろん1日も調整していません。そのままです。

トレンドがそこにあるのか、あるいは今はレンジなのか、これを指数化しようと試みたテクニカル分析が「ADX」です。日本では方向性指数とも呼ばれていて、知名度は今ひとつです。知らなかったという人は一度試してみると良いかもしれません。

ただ、所詮はテクニカル分析に過ぎないので過度な期待は禁物。なぜなら、ADXにも「期間」設定があり、どれくらいの期間相場が動いたらトレンドなのかを設定できるのですが、単なるノイズをトレンドを認識したり、トレンドなのに認識が遅れてサインを出す頃にはトレンドが終わっていたりと、さすがはテクニカル分析といったところです。

平均回帰戦略(いわゆる逆張り)

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価格が移動平均線の周辺をうろうろと動く性質を収益化しようと試みた手法です。いわゆる平均回帰戦略で、移動平均線を抜けた時点でボラティリティ的にそれ以上動くのが難しいかもしれないという局面で逆張りを仕掛けます。

プロフィットファクターは正直いってゴミですが、勝率やKレシオは悪く無い。ちなみに、Kレシオが高いことが意味するのは一般的には収益の安定性です。

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Kレシオが高い手法は、収益グラフがとても滑らかになるのが特徴。ただ、ボラティリティをボラティリティレシオという既存のテクニカル分析を使っているため、簡単にカーブフィッティングに陥る可能性を秘めているのが厄介です。

どれくらいの範囲で「それ以上は動けない」と認識するのか。0.1数値を変えるだけで成績が変化するため、非常に扱いが難しい。直感的には使いたくないと思っています。

他にもある「期間」以外で移動平均線の有効性を高めるアイディア

移動平均線の一般的な使い方をバックテストしていくと、ある共通点に気づきます。例えば、移動平均線のクロス手法を検証すると、直近のドル円だと良い成績を残し、ユーロドルだと壊滅的な成績になる傾向があります。

ここから分かることは、ドル円は上昇トレンドが含まれていて、ユーロドルは上昇トレンドが存在しないか、激しい下落トレンドであった可能性があります。その証拠に、売買を逆転させて検証すると、両者の損益グラフが正反対になる。

つまり、移動平均線が相場から引き出しているものは純粋にトレンドです。あらゆる通貨ペアでバックテストをして、最適化を行っているとどの期間を使っても利益が出る相場は存在する。結局のところ、相場にトレンドがあれば移動平均線はおのずと利益を出す仕組みになっている。

ということは、トレンドがあれば「期間」は割とどうでも良いということで、「期間」よりももっと重要なのは、いかにしてトレンドとレンジを見分けるか・・ということに終着点が見えてくる。見分けるアイディアをまとめてみます。

  1. ドル円とユーロドルが同じ方向にクロスしたら、ユーロ円をその方向にエントリー。
  2. ドル円とユーロドルが反対方向にクロスしているなら、ユーロ円をレンジ判定する。
  3. 移動平均線の期間を相場の周期性に合わせて自動でフィットさせる。
  4. 標準偏差を使ってレンジ・トレンドを判定する
  5. ボリンジャーバンドを詳しく考えてみる(苦笑)

個人的には1~4が好みです。5は一般的なテクニカル分析が入ってくるので、正直興味をほとんど持てません。1~2のアイディアは、別にドル円とユーロドル以外に適用しても使い所はあります。それに、決して通貨ペア限定でもありませんし。3番のアイディアは頓挫してますが、作れない事はないと感じています。

要するに相場が動いている時と、動いていない時の特徴を考えてみれば、自ずと分かってくる部分。簡単にいえば、相場が動いている時って前後を見比べてみると「差」が大きいですよね。逆に動いていない時は前後を比べても「差」が小さい。この差を計算に使えば・・というのが基本的な考え方になる。

・・それでも移動平均線の期間にこだわりたい

という方は、移動平均線の期間を検証してみて、同じような数値が密集している地帯を見つけてください。

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例えば、最適な期間を検証した結果、13日線、19日線の成績がとても良かったとします。しかし、13と19日線にはトータルで劣っているものの、56~71日線はどれも成績が似ている傾向がありました。ここから考えられることは、13日線や19日線は、期間が1日ズレるだけで成績が大きく悪化してしまう

つまり、将来に渡って勝ち続ける手法とは到底考えられないということです。相場の周期性が僅かでも変動してしまったら、そこで終わり。それに対して、56~71日線は幅が広く、相場の周期性が多少変動しても何とか対応できる可能性が残されています。このような期間を使えば、将来に渡って多少はマシな耐久性を見せる可能性がある。

どうしても移動平均線の期間にこだわりたい方は、似たような期間が密集している部分を選ぶのが将来に渡って利益を残せるコツだと思います。もちろん、保証はしませんし圧倒的な利益は出ないと思います。僕自身は正直言ってチャートに移動平均線が表示されていればそれ良いと考えているので。期間なんて初期設定で使っています。

 

期間設定へのこだわりが不毛である理由をまとめる

移動平均線に設定した期間が、相場の周期性に一致すればトレンドを上手く捉えられますが、これは逆に言えば期間と周期性が一致しなくなったら、トレンドを捉えられずに利益が上手く出せなくなってしまうということだ。

そして、現実の相場の周期性は常に変動しており、その変動を最速で捉えて期間を可変にする方法もありますが、一般的にこれは非常に難易度が高くオススメではありません。では検証で優秀な成績を出した期間を使えば良いのか、ということですが、これは過去に当選した宝くじの番号を使うのと原理的に同じです。

過去に当選した番号が、未来に渡って当選するとは誰も思っていません。それと同じで、過去に派手に機能した移動平均線が、今後も派手に機能し続ける保証はどこにもない。なぜなら、相場は今後も変化し続けるためだ。検証で幅広く対応できている期間を使うのも手だが、これもどこかに限界があるだろう。

移動平均線は単に「トレンドを抽出する能力」があるものの、レンジ相場でもサインを出すことが出来るため、サイン通りの売買をすると確実にトータルで負けてしまう。環境認識が大事という言葉も聞きますが、理論的にトレンドとレンジを見分ける方法はある程度存在するため、そのあたりを検証してみるのが現実的です。

テクニカル分析であればADX(方向性指数)、ExcelやMQL4を少し使えるなら標準偏差や対数変化率にヒントがあるかもしれない。トレンドは前後を比べると「差」が大きく、レンジは「差」が小さいという特徴も、何かしら使えるアイディアだと思います。そして、こうしたアイディアは裁量トレードにも活きてくると思っています。

直近の値動きがとても静かなのに、いきなり動きまわる事は基本的に無く、相場が動く時というのはそれなりに材料(指標など)がある時か、時間帯の変化などです。あと、トレンドを見分けることが大事だと言っていますが、決してレンジ相場に収益性が無いと言いたいわけではありません。

レンジ相場も「レンジ」と分かっていれば稼ぎやすい局面だ。例えば、指標が控えている通貨を数pipsだけ繰り返し抜いていくスキャルピングなどが考えられる。ということで、以上「移動平均線の期間にこだわるのが無駄な理由」について解説できた。ちなみに僕自身は20日移動平均線(SMA)を使っています。エントリーの判断には2割程度しか使っていません。

 

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