近江地域学会総会・研究交流大会(2018.12.16) 分科会の開催報告

2018年12月16日(日)滋賀県立大学A2-202教室において、「近江地域学会」の第5回通常総会とともに研究交流大会を開催しました。
当日は、ユヌス・よしもとソーシャルアクション(株)代表取締役社長 小林ゆか氏からの基調講演の他、3つの分科会に分かれた研究発表、パネルディスカッションを行いました。
県内各地から123名の方にご参加いただきました。

「近江地域学会」についてはこちらのページをご覧ください。

近江地域学会 総会
研究交流大会「地域ににざすSDGs」

日 程:2018年12月16日(日)(総会9:30~)10:10〜16:30
場 所:滋賀県立大学 A2-202ほか(滋賀県彦根市八坂町2500)
参加者:123名
主 催:近江地域学会、滋賀県立大学
共 催:彦根市、長浜市、近江八幡市、東近江市、米原市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町、滋賀県

ここでは、午前中に開催したプログラム「研究発表・事例報告「地域からの報告」」で行われた各分科会の発表内容を報告します。

研究発表・事例報告「地域からの報告」
「地域からの報告」では、応募があった研究発表・事例報告について、分科会に分かれ、各3テーマの発表を行いました。

分科会1【テーマ:コミュニティ・カフェの実践事例に学ぶ】

発表① 石神愛海(滋賀県立大学 人間文化学科 学生)
近江楽座の学生チームによる古民家カフェ「おとくらプロジェクト」
発表② 莚井 円香(滋賀県立大学 環境科学部 学生)
コミュニティ・カフェComeCome(学生によるワンコインカフェ)
発表③モリコーニ・直美(地球ハートビレッジ)
A&H CAFE アート&ハートカフェギャラリー
発表④森恵生(彦根市社会福祉協議会)
彦根市内のコミュニティ・カフェ事例紹介

モデレーター:鵜飼 修(滋賀県立大学地域共生センター 准教授)

参加者:45名

分科会1では、「コミュニティ・カフェ」をテーマとし、実践事例の発表と、カフェを継続運営するための要素と手法を考える意見交換を行いました。

発表① の報告は、近江楽座「おとくらプロジェクト」を運営する学生です。おとくらは、2010年に学生たちが彦根市高宮町中山道の築200年の蔵をギャラリー・喫茶・イベントスペースに改修し、高齢化や商店街の衰退に悩む地域を元気にするために、喫茶店の運営をはじめとした様々なイベントを学生主体で実施しています。
学生からは、おとくらプロジェクトの経緯や、実施した事業の報告がありました。新メニューの開発やギャラリーの運営、地域の行事に参加するなど学生が中心となって新たな試みにチャレンジし、積極的に地域と関わっている様子が紹介されました。

  • 近江楽座とは…滋賀県立大学の学生が主体となって地域に入り、地域と連携しながら様々な取り組みを行う活動のことです。 HP:http://ohmirakuza.net/

発表②の報告は、「コメニティ・カフェComeCome」を運営する学生です。コメニティカフェは、2018年度の滋賀県立大学地域教育プログラム「地域デザインC」という授業から生まれたコミュニティ・カフェです。授業ではカフェのコンセプト・ターゲット設定、メニュー開発をし、彦根市石寺町のほほえみハウスにて二回カフェを実施しました。2日の実施で地元住民を中心に111名集客し、2018年5月から月に一度、地域デザインCの受講学生が中心となり、運営しています。
学生からはcomecome立ち上げの経緯、地元のお米をつかったスイーツ「こめっふる」の紹介など動画を混じえながら説明がありました。

発表③の報告は、「A&H CAFE アート&ハートカフェギャラリー」のモリコーニ・直美氏からです。A&H CAFÉは2015年に立ち上げた「地球ハートビレッジ」というアートをテーマに活動する団体から出発し、その後、フリースクール運営をきっかけに交流拠点づくりに取り組み、「中野ヴィレッジハウス」をオープン。その一角にカフェを設け、運営を行なっています。
中野氏から、「今後も地域を元気にするために積極的に共創の場を作っていきたい」との思いが伝えられました。

発表④の報告は、彦根市社会福祉協議会 森恵生氏から報告彦根市内のコミュニティ・カフェの事例や、社会福祉協議会が地域の中で果たす役割について報告がありました。まず、芹川地区や若葉学区等のコミュニティ・カフェの事例紹介があり、その後、社会福祉協議会からのメッセージとして、「まず、できることをやってみること。その思いに社協が支援やサポートをさせていただきます」と述べました。

事例報告後は意見交換会として、カフェの運営について困っていることについて意見を交わし、報告者がカフェ運営に対する思いなどを語り、コミュニティ・カフェの運営者や支援者の運営に対する思いや悩みなどリアルな生の声を聞く貴重な機会となった分科会でした。

分科会2 働く・学ぶの新しいカタチー起業・企業研究会企画(COC+

発表① 上田 洋平(滋賀県立大学地域共生センター助教
イントロダクション「人生100年時代」のはたらく-学ぶを考える
発表② 有本忍・竹林竜一(株式会社Re‐birth)
学生ー企業マッチングの新しいカタチ―大津・就活Room Tsugumiの取組
発表③ 山本智子(認定特定非営利活動法人つどい)
就労支援の新しいカタチ―長浜「総出事業」が生み出したもの
発表④ 的場保典(近江八幡空き家活用プロジェクト)
起業家支援の新しいカタチ―近江八幡・地域クラウド交流会の取組み

モデレーター:上田 洋平(滋賀県立大学地域共生センター助教)

参加者数:28名

分科会2では、4件の報告がありました。

発表①では、「人生100年時代の働く・学ぶを考える」として、上田助教によるイントロダクション講演がありました。
人生100年時代の到来は、人々の人生がマルチステージになることを意味しています。これに伴い、さまざまなカタチやキャリアが生み出されることが予想されます。(例えば、エクスプローラー(探検者)、インディペンデントプロジェクター(独立生産者)、ポートフォリオワーカー(さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる。)
「お金のために働く」ことは、手段と目的が逆になってしまっている状態でいわば本末転倒です。
これからの時代は「競争」から「共生」へのシフトチェンジが必要です。いわば、「いますぐ・私に・見返りを」の時代から「ゆっくり・みんなに・お返しを」に変わっていく必要があります。(ビジネスからブジネス(無事の経済)ヘ)
この点において大学としては、産業連携によるリカレント教育など時代や社会のニーズにあったそれに即応する人材の育成に努める必要があります。
学びの本質は、一定の目標と問題に対する最適解を選び出すことではなく、必要に応じて目標や問題そのものを定義し直しながら、自己の行動を絶えず変化する現実に照らして修正し、学習する自己超越を実現することにあります。そのためには必要に応じて既存の知識を捨てる「学習棄却(unlearning)」すなわち自己否定的学習ができるかどうかも問われます。

発表②では、株式会社Re-birthの就活Room Tsugumiの活動報告がありました。
Tsugumiは、株式会社Re-birthが今年の6月に新たに立ち上げた場で、学生が他者と関わり繋がることで様々な価値観や生き様を知り、一緒になって育ち合う新しいコミュニティです。
Tsugumiの登録者は、現在200名弱、利用者は100名弱。
Tsugumiは、新たな採用活動の拠点として、採用活動サポートを行い、求人~採用~定着のワンストップサービスを行うとともに「生きる」という軸、「働く」という軸、「優しさ」という軸から、学生に力を身に付けていただくための取組をしています。
具体的な取り組みとして、交流会で、様々な価値観や生き様を知ったり、個別で会社見学や業界研究等をしたりしています。学生同士がともに支え合い、助け合う風土・仲間意識の高めることが目的です。その他、無戸籍の問題など社会課題について認知するイベントも併せて実施しています。
また、大学と連携し、インターンシップや企業研究会・合同企業説明会を実施し、アフターフォローを含めて人間関係の構築をしています。

発表③では、ケアプランつどいからNPO法人つどいの説明がありました。つどいは、県内10件目の認定NPO法人。最後まで住み慣れた家や地域で生き続けることを目的とした事業を行っています。事業は、幅広く、ケアプラン(居宅介護支援)、介護予防事業、障害児長期預かり事業、寄り合い所、放課後児童クラブ、農園事業、ライブハウスやボイストレーニング・カレッジ、地域高齢者メイド喫茶等を実施しています。
リタイア世代や障害者、育児中の母や引きこもりの方などが、地域で無理なく働けることを目的としたコミュニティ機能をもった農場等を軸とした「総出事業」をしている。
本年度は、新会社TUNAGUを設立。椎茸会社の事業継承や蓮の加工等やフレグランスの製作など様々なことをしています。

発表④では、近江八幡地域クラウド交流会実行委員会(近江八幡まちづくり会社まっせ)の的場保典さんから、近江八幡における地域クラウド交流会による起業家支援の取組の紹介がありました。
地域クラウド交流会は、地域の起業家が起業アイデアをプレゼンし、支える側の参加者は一人当たり500円のファンディングおよび500円の参加費を支払って参加、クラウドアプリ上の得票数に応じて起業家が商品(商品券)を得るという新しい形の起業家支援です。「つながる。広がる。うまれる。」を合言葉に、起業家の応援を通じて地域が活性化することを目指しています。
交流会では、参加者同士がつながる仕掛けとして、参加者名刺コーナー、クラウド交流会カード、地域のホットなお得情報(チラシ)、交流会タイム、アフター交流会等の様々な意欲的な取組を実施しているのが印象的でした。
事例発表後の交流では積極的な意見交換がなされ、今後の時代にあった「働く・学ぶの新しいカタチ」を考える非常に有意義な場となりました。

 

分科会3 地域資源・ネットワーク活性による地域課題へのアプローチ
-COC公募型地域課題研究報告会-

発表① 平山 奈央子(滋賀県立大学 環境科学部 助教)
内湖再生における住民参加手法の検討
発表② 松嶋 秀明(滋賀県立大学 人間文化学部 教授)
「放課後児童クラブ」における子どもの良質な生活のあり方
発表③ 河 かおる(滋賀県立大学 人間文化学部 准教授)
小規模自治体における多文化共生推進に関する研究―事例収集と愛荘町の課題抽出
発表④ 馬場 文(滋賀県立大学 人間看護学部 助教授)
乳幼児期の親子から始める生活習慣病予防対策―実態把握調査―

モデレーター:秦憲志(滋賀県立大学地域共生センター主席調査研究員)

参加者数:20名

発表①では、
・早崎内湖における2年間の研究で、早崎内湖再生保全協議会と滋賀県、長浜市との共同で進めてきた。1963~1970年に県によって干拓された。2001年から90haのうち20haを内湖に戻す取り組みが進められている。
・干拓地を再び水辺に戻した時に人々がどのように関わることができるのか。維持管理をどうしていくのかという課題がある。1年目のアンケートで、自治会や地域でのつながり、地域外の人とのつながりを求めている人は交流目的で内湖を使っていきたい。また、環境保全やイベントに関わっていきたいと思っている。
・2年目は内湖塾を開催した。あるべき姿として、「水がきれいである」「多様な生物の生息場」など。関わり方として、「環境学習」「資料館をつくって理解を深める場」「資源を使って利益が得られる」など。また模型をつくって意見を可視化した。この模型を活用して、さらに議論を深めていってもらいたい。今後の課題は、どういう人たちに関わってもらうのか、内湖のまわりの地域もあわせて考えていく必要がある。
(質疑応答、意見)
・出てきた意見は参加された方の意見(そう、地域の人、全てではない)。
・こういう課題に住民が参加する意味(滋賀県は内湖に戻すまではする。しかし維持管理
や利用は地域住民や利用者がしていく必要がある)。

発表②では、
・長浜市では人口が減ってきている地域や子育てのしやすいまちにしたいという課題がある。その中で放課後児童クラブは大事。しかし環境や人員も整わない。
・小学校1、2年生が学校にいる時間は1,000時間、クラブは1,600時間。子どもの成長・発達によい場所にしたい。長浜市の25ヶ所のうち16のクラブのフィールドワークを行った。
・本来は家にいてよいはずの子どもたち。家と同じように、ゆっくりしていてもよい場所、安全でくつろげる楽しい場所にしてやりたい、と指導員の人たちは思っている。
・家と学校との中間地点。子どもたちの本音を感じ取れることもある。
・子どもに楽しい思いをさせる。段ボールハウスをつくる。ドミノを並べる。みんなでドミノ倒しをしようという活動が始まったりする。集団で楽しく遊ぶ。そういうことができるのがよいところ。学生も継続的な関わりができるとよい。
(質疑応答、意見)
・支援員になったきっかけは(半分くらいは子育てを終えた主婦の方。保育士や教師経験の方が少ない。フルタイムで働けない事情がある)。
・地域性との関係は(地域に応じた課題が出てくる。都市部、外国人の多い地域もある。規模もある)。

発表③では、
・愛荘町で2年間実施し、今年SDGsの地域課題研究を進めている。旧愛知川町域は、外国人が多い。県内でトップクラス。年齢層では、20~30歳代の割合が高く、ブラジル人の場合は子育てをしている方が多い。
・就学前の外国人の子どもの課題が見落とされている。長時間保育を求めており、日本の認可保育園、幼稚園の利用は少ない。言葉の問題もある。受け皿は外国人の保育施設。公的補助はなく、保育料のみで運営。
・行政も保育の実態を把握できていない。独自推計で、両親またはどちらかが外国人の子どもは7%程度、14人に1人。保育園、幼稚園に行っている子どもは少ない。近隣の自治体から愛荘町の施設に通っている子どもたちも多い。
・外国人学校、保育施設は、母語で話すことが出来る。子どもたちの居場所。コミュニティの拠点。
・実態の把握。外国人の保育環境の整備。プレスクール。外国人住民のニーズの反映の4つの提言を行った。
(質疑応答、意見)
・長浜市も外国人が多い。子どもの乳幼児健診に通訳人がいる。愛荘町はどうか(ポルトガル語の通訳は必ずついている。受診率100%を達成している。それ以外の言語への対応も必要になってきており、小さな自治体では課題)。
・外国人労働の受入が緩和されると、今後どうなっていくか(今はポルトガル語の通訳。今後はベトナム語とかタイ語とか、より多様化してくる。通訳の養成は時間がかかる)。

発表④では、
・甲良町の保健士と共同で乳幼児健診受診児童の保護者に対して実態調査を行った。28年度の研究成果。6才未満の児童がいる3世代世帯が1/3を占め、農村地域というのが甲良町の特徴。生活習慣病は大人の問題であるが、背景にある食生活は子どもたちにも影響する。乳幼児の生活や食事の状況、保護者の意識、家庭での食教育の実態を明らかにした。
・間食のとり方、乳酸菌飲料やジュースなど甘い飲み物のとり方に課題があるのではないかと推察された。このため、重点的にポイントを絞った情報を保護者の方に伝えていく必要がある。また対象の状況に応じた情報発信や保健指導が大切である。
・こういった情報を健康推進員の方に提供して、地区ごとの啓発活動に活用してもらっている。
(質疑応答、意見)
・味付けが濃いとか、甘いものへの許容性が高いとか食文化の質的なものが、今回の調査結果とも重なっている。今後、これらのデータをうまく活用していきたい。

全体を通じて
・環境保全と住民参加や地域の子どもたちを取り巻く環境など、地域課題の解決に向け
て、地域と連携した密度の濃い研究成果を上げていただいている。引き続き、皆様のご協力、ご指導の程、よろしくお願いします。