近江地域学会総会・研究交流大会(2017.9.30) 分科会の開催報告

2017年9月30日(土)滋賀県立大学A2-202教室において、大学COC/COC+事業の一環として「近江地域学会」の第4回通常総会とともに研究交流大会を開催しました。
当日は、慶應義塾大学政策・メディア研究科 特任講師 小坂 真理氏からの基調講演の他、3つの分科会に分かれた研究発表、パネルディスカッションを行いました。
県内各地から130名の方にご参加いただきました。

「近江地域学会」についてはこちらのページをご覧ください。

近江地域学会 総会
研究交流大会「SDGsと地域の持続可能性――近江の“BUJIness(ぶじねす)”モデル――」

日 程:2017年9月30日(土)(総会9:30~)10:10〜16:30
場 所:滋賀県立大学 A2-202ほか(滋賀県彦根市八坂町2500)
参加者:130名(全体)
主 催:近江地域学会、滋賀県立大学
共 催:彦根市、長浜市、近江八幡市、東近江市、米原市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町、滋賀県

ここでは、午前中に開催したプログラム「研究発表・事例報告「地域からの報告」」で行われた各分科会の発表内容を報告します。

研究発表・事例報告「地域からの報告」

「地域からの報告」では、応募があった研究発表・事例報告について、分科会に分かれ、各3テーマの発表を行いました。

分科会(1) 地域の未来を考える:地域診断法WS事例・展開報告と認定ファシリテーター制度試案《地域診断法研究会企画》

  1. 岸本 凌太(多賀中学校 学生)
    大滝小学校における地域診断法ワークショップの実践
  2. 小島 なぎさ(一般社団法人まちづくり石寺)
    彦根市下石寺町での実践と総合計画への展開
  3. 池戸 洋臣(東近江市まちづくり協働課)
    東近江市五個荘川並における実践と展開
  4. 新村 佳嗣(行政書士新村法律事務所 / 地域資源・エネルギーコーディネーター)
    多賀町萱原地区における実践と展開

モデレーター:鵜飼 修(滋賀県立大学地域共生センター准教授)
参加者数:31名

分科会1は近江地域学会の研究会である地域診断法研究会がコーディネートを行い実施しました。
「地域の未来を考える:地域診断法WS事例・展開報告と認定ファシリテーター制度試案」というテーマで4件の地域診断法ワークショップ(以下WS)の事例報告、その後報告者をパネラーとしたパネルディスカッションを行い、WSの手法や認定ファシリテーター制度に関して議論を深めました。
1件目の報告は岸本凌太君(多賀中学校1年生)による、「大滝小学校における地域診断法ワークショップの実践」でした。岸本君は昨年度、多賀デザイン・カレッジ大滝キャンパスの枠組みで実施した、大滝小学校の総合的な学習の時間における地域診断法WSを受講した6年生のうちの一人です。授業の様子や最後の成果発表を振り返りながら報告し、「初めて知る地域のことが多くてびっくりした」「改めて地域のことに目を向ける意識が持てた」と感想を述べました。

2件目の報告は小島なぎさ氏(一般社団法人まちづくり石寺)による、「彦根市下石寺町での実践と総合計画への展開」でした。まちづくり基本計画の策定に向け、基礎となるビジョンづくりのためにWSを実施した事、また策定後には自治の仕組みの見直し、福祉委員会の新設の再編など現在の取り組みについて報告がありました。

3件目は、池戸洋臣氏(東近江市まちづくり協働課)から「東近江市五個荘川並における実践と展開」についての事例報告でした。川並の現状と課題、WS当日の様子を説明しました。その後の展開として、まちづくり推進委員会を今年度設置し、「地元の方がまちのことを自分ごととして考えていく事が重要であること」「行政としては地域に寄り添いながらまちづくりを推進していきたい」ということを述べました。

4件目は、新村佳嗣氏(行政書士新村法律事務所 / 地域資源・エネルギー コーディネーター)から「多賀町萱原地区における実践と展開」についてファシリテーターの目線で報告を行いました。新村氏がWSのファシリテーターを行う際に気をつけているポイントをまとめ、「ファシリテーターはお産婆さんに近い。出産を変わることはできないが、励ましたり促したりはできる」「ファシリテーターは地域への愛がないとできない」と言及しました。

その後の意見交換では、発表者はパネリストとして登壇し、WSを広めるため、誰もがWSを実施できるよう、何を簡単にすれば良いか、また、ファシリテーターの認定制度について、どのような素養があれば認定できるか、等意見が交わされました。
以上のように本分科会では、WSの事例報告と、今後のWSの方向性に向けて幅広い年代層で議論が展開されました。
今後の研究会では、WSにおけるファシリテーター認定制度についての議論や、手法のブラッシュアップについても引き続き議論を深めていきます。

分科会(2) 地域と連携した共育によるアントレプレナー人材育成・地元定着へ 《起業・企業研究会企画(COC+)》

  1. 上田 洋平(滋賀県立大学地域共生センター助教)
    地域共育による人と学びの再生産―滋賀県立大学における地域共育の実践から
  2. 西岡 孝幸(滋賀県立大学共生センターCOC+推進室COC+推進コーディネーター)
    学生の地元定着に向けたサプライチェーンモデルと経験学習――COC+の教育実践を事例として
  3. 辻合 貴俊・山田 惇敬(滋賀県立大学工学部 学生)
    新・可視光応答型光触媒の事業化―大学によるアイデアコンテスト優秀発表事例から
  4. 林 正隆(プラスエイチワークス)
    特色ある地元企業と学生との創造的なマッチングについて―地元就職マッチングサイト「シガトコはたらく」の取り組みについて

モデレーター:上田 洋平(滋賀県立大学地域共生センター助教)
参加者数:19名

分科会2では、4件の報告がありました。

【1.】では、「人が育つ大学」としての滋賀県立大学の人を育てて地域に輩出する取組が紹介されました。滋賀県立大学では、学生の地域活動「近江楽座」、近江環人、近江楽士(地域学)副専攻課程、COC事業、COC+事業の取組を行い、学部学科の壁を越えた人材育成を積極的に行っています。

【2.】では、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」(COC+事業)が説明されました。県内6大学と教育プログラムを改革しつつ、インターンシップ等学生の地域定着を図るために学生の能力を高めるとともに学生と企業をつなぐ取組を進めています。具体的には、教育のサプライチェーンモデルとして一連の流れとしての地域学人材育成を提供しています。

【3.】では、今年10月の「大学によるアイデアコンテスト」で発表を行ったチームオプティカルテクノ(滋賀県立大学生:辻合貴俊、山田惇敬)の光触媒の事業化にかかるビジネスプランの発表を行いました。光触媒とは、太陽光や蛍光灯などの光が当たることにより触媒として働く物質のことで、有害物質を二酸化炭素や水に分解する機能を持ちます。光触媒は紫外線の強い屋外での需要がほとんどで、屋内需要は約3%ですが、屋内利用の光触媒を開発できれば大きなビジネスチャンスとなります。

【4.】では、滋賀県で一番フォロワー数の多いフェイスブックサイト「しがトコ」を運営する。エイチプラスワークスが本年度より新たに取り組む地元求人事業「しがトコはたらく」の説明を行いました。現在新たに展開している滋賀で新しい働き方を提案する会社との連携による効果的な情報発信について事例紹介がありました。

モデレーターの上田 洋平助教による意見交換では、本学工学部教員より「大学のアイデアコンテスト」について、「大変有意義な試みであった。学部でも出口を見据えた議論が深まるなどの好影響があった」という意見や「技術論だけではなくどういう風に話したら人に聞いてもらえるかと言うことに気を配った視点がよかった。是非頑張ってほしい」といった肯定的な意見が多く寄せられました。
また、参加者からは、光触媒のビジネスプランにかかる連携の打診があるなど、学生と企業をつなぎ、新規雇用創出を促す上で有意義な交流の場となりました。

分科会(3) 地域資源・ネットワーク活性による地域課題へのアプローチ 《COC公募型地域課題研究報告会》

  1. 高田 豊文(滋賀県立大学環境科学部環境建築デザイン学科 教授)
    多賀町産木材の民間住宅への利用拡大に向けた調査研究
  2. 藤敦 正幸(伊吹山集落営電/地域資源・エネルギーコーディネーター)
    集落営電~集落単位のコミュニティ発電所~
  3. 伊丹 君和(滋賀県立大学人間看護学部人間看護学科 教授)
    地域住民の防災意識向上および「防災力」強化に向けた地域ネットワーク構築に関する基礎研究
  4. 萩原 和(滋賀県立大学地域共生センター 准教授)
    地域活動支援および参加促進を目的とした人材育成システムの実装

モデレーター:萩原 和(滋賀県立大学地域共生センター准教授)
参加者数:14名

発表1.
(発表者:滋賀県立大学 高田)
・町の中央公民館を新築するにあたって木造でできないか。多賀町産木材を一般住宅に使えないかという目的で、町内で検討が進められてきた。その背景として、公共建築の木材利用は進んでいるが、一般住宅では進んでいないという現状がある。
・本研究では、「多賀町産木材の民間住宅への利用拡大」という地域課題の解決のために、地元工務店や建築設計事務所の木材利用に関する意識調査と多賀町産木材の力学性能について実験を行った。
・アンケート調査は103社に送付し54件の回答があった。業務については、年間、新築2~5棟、リフォーム10棟くらい行っている事業所が多く、中小規模といえる。木材については、産地を気にしており、山から材が出れば、使ってもらえる可能性があることがわかった。材料の選定にあたっては、価格・品質・樹種を重視する傾向にある。
・多賀町産のスギ・ヒノキ材の力学的性能については、調査の結果、概ね妥当に評価できると判断された。
・研究のまとめとして、多賀町で木材の品質を保証して販売するという方法を提案した。
(質疑応答、意見)
 ・価格面での優位性はあるか。
  (公共建築ではJAS認定が必要。その工程でお金がかかるので、その保証を町が出来れば、運搬費用等のコストは安くなる)
 ・県内産材の中で、多賀町産材の特色は何かあるのか。
  (県内についても、少しずつ調査を進めている)
 ・性能実験を市民ができるよう、広げてもらえればよいのではないか。
 ・実験は町でも出来るのか。大学の役割はどんなところか。
  (設備を入れれば、簡単な強度試験くらいはできる。サンプル試験は大学で行う等)

発表2.
(発表者:伊吹山集落営電 藤敦氏)
・蓄電池を併設して自給型の電力システムを構築した集落営電は、分散型発電の理想的な形態である。
・東日本大震災以降、大規模集中型から地域分散型の電力システムへという流れが強くなっている。制度改革も進んでおり、2016年4月から、低圧向け電力小売り事業の自由化、2017年4月には一部大企業でネガワット取引が始まり、2020年には発送電分離が予定されている。
・今後、エネルギーリソースアグリゲータ(ERA)という事業が期待できる。エネルギーの需給調整を行う調整力を提供するサービスのことで、需要家に太陽光発電や蓄電池などのリソースを提供することができれば、集落で需給を調整するアグリゲータになることも考えられる。太陽光発電設備を集落で所有することは、流動性の高い金融資産を保有することにもなる。
・集落単位でコミュニティ発電所を営む集落営電は、コミュニティビジネスとしても最適で、サスティナブルは地域活動を担保することに繋がる。
(質疑応答、意見)
・導入コストは、どうか。
 (1軒あたり3.5~5kWの発電装置と蓄電地、需給調整の設備を備えるとして、全体100kW程度で5,000万円くらいか(集落25軒で、1軒あたり200万円程度))
・集落の間での合意形成は得られやすいか。
 (防災面で有利性がある)

発表3.
(発表者:滋賀県立大学 伊丹)
・宮城県南三陸町へ毎年、ボランティア活動に行っており、災害にあった時に、どうしたらよいのだろうか、というのがそもそもの問題意識としてあった。
・彦根市の防災力はどうか。A町をケーススタディにした。自主防災組織を登録していたが、住民は全く意識していなかった。
・町歩きと防災マップづくりをした。地域の人たちと一緒に話し合うことで、昔はこういうところで水害があったとか、教えてもらった。
・災害時、要支援者の対応は今後、考えていく必要がある。
・最終的な成果として、自主防災組織の規約が2017年1月にでき、今年度より組織が動き出した。学生が地域に入り込んで、住民の方の生の声を聞くことは大変、勉強になる。
(質疑応答、意見)
・町民の参加者の年齢は、どうか。こういうことに地域の若者がどう関わることができるのか関心がある。
 (地域の若い人は参加していない。高齢者が多い)
・要支援者はどんな人か。行政の対応は。学生が地域に求めることは。
 (身体障害があって、一人では移動が難しい。民生委員は把握しているが個人情報の壁がある。行政は健康推進員とかは把握している。学生が求めることについては、答えるのが難しい)

発表4.
(発表者:滋賀県立大学 萩原)
・米原市のルッチまちづくり大学の同窓会組織の組織運営体制を整え、ネットワーク体制を構築することが課題だった。
・ルッチまちづくり大学の卒業生在校生を対象にアンケート調査を実施。
・人材育成の課題として、「自分から遠い課題テーマ、活動団体にふれる」「さりげなく、他世代、他団体と交流する」「自分の取り組んでいるテーマ、趣味を振り返り、今の想いをわかちあう」ことが求められている。
・ルッチまちづくり大学のこれからについて、たとえば、在校生が卒業生の今を教えてもらうことが考えられる。他期生とのつながりをつくっていくことが大切である。

全体を通じて
(高田)
・多賀町の協議会の中での議論で、機械を導入しようという話が出ている。山の境界確定が課題。
・防災組織はあるけれど、住民の人が気づいていないということが印象に残った。
・この事業を通して、地域の人と良い関係が築けたことがよかった。
(伊丹)
・地域の人たちが少しでも健康になってもらえるよう、地域とのつながりを大事にして活動していきたい。
・学生たちも地域から多くのことを学ぶことができる。
(藤敦)
・世界的にみて、地域社会の結びつきが弱くなっているが、地域で自分たちの電力を自分たちでつくり、毎月しっかりとお金が入ってくるしくみが出来れば、地域の力も高まってくる。ドイツでは地域で電力システムが出来上がっている。
(萩原)
・このような地域学会のよさは、日頃フィールドで活動して感じたことを多くの人とコミュニケーションをとって、広げていくことができるところにある。

 

 

近江地域学会総会・研究交流大会の開催内容は下記のページにて報告しています。
近江地域学会総会・研究交流大会(2017.9.30) を開催しました
https://coc-biwako.net/archives/4250.html